実現しなかったマーベル映画|ガンビット単独作、インヒューマンズ、フォックス版X-MENの未完の計画を振り返る
映画の企画は、公開されるものより消えるものの方が多い——という業界の常識は、マーベルにも当てはまります。
そして面白いのは、消えた企画の痕跡が、公開された作品の中に残っていることです。あのキャラがなぜ中途半端な扱いなのか、あの伏線がなぜ回収されないのか。理由の多くは「作られるはずだった映画」にあります。
ガンビット単独作 — 10年動いて、消えた
最も有名な未完の企画でしょう。20世紀フォックスは2014年頃から『ガンビット』の単独映画を進めており、主演にはチャニング・テイタムが決まっていました。
問題は、監督が何度も降板したことです。数年にわたって監督が入れ替わり、脚本も書き直され、公開予定日は繰り返し延期されました。テイタム自身がこの企画に強い思い入れを持っていたことは知られていて、彼が何年も待ち続けたことも含めて語り草になっています。
そして2019年、ディズニーによるフォックス買収が完了すると、企画は正式に消滅しました。
ところがこの話には後日談があります。2024年の『デッドプール&ウルヴァリン』で、テイタムがガンビットとして実際にスクリーンに登場したのです。しかも役どころは「世に出られなかった者たちが集まる場所」の住人。作られなかった映画の主演俳優が、作られなかったことを前提にした役で登場する——マルチバースという仕掛けだからこそ可能になった、かなり特殊な救済でした。
インヒューマンズ — 劇場公開のはずだった
2014年、マーベル・スタジオは『インヒューマンズ』の劇場公開を正式に発表していました。フェーズ3のラインナップに名前が入っていた時期があるのです。
しかし計画は変更され、最終的にはABCのテレビドラマとして制作されることになります。2017年に放送された全8話は酷評され、1シーズンで終了しました。
この転換の影響は、意外なところに残っています。ドラマ『エージェント・オブ・シールド』シーズン2以降でインヒューマンズ設定が本格導入されたのは、映画企画と連動する構想があったからだと言われています。結果として、映画は作られず、ドラマだけが設定を抱えたまま残った。アッティランという月の隠れ都市も、テリジェン・ミストという用語も、MCU本流ではほとんど使われないまま現在に至ります。
フォックス版X-MENの未完の計画
20世紀フォックスのX-MENシリーズは、買収によって強制的に幕を閉じました。そこには回収されなかった伏線がいくつも残っています。
最も分かりやすいのがミスター・シニスターです。『X-MEN:アポカリプス』のクレジットシーンで「エセックス社」の職員がウェポンXの血液サンプルを回収する場面があり、これは明確にシニスター登場の布石でした。『LOGAN/ローガン』でも関与が示唆されています。しかしシリーズは終了し、彼が画面に現れることはありませんでした。
もっとも、この話も救われつつあります。2028年公開予定のMCU版『X-MEN』で、ミスター・シニスターをアダム・ドライバーが演じることが発表されました。10年近く待たされた伏線が、まったく別のシリーズで回収されるという奇妙な形ではありますが、彼はついにスクリーンに立ちます。
『ニュー・ミュータンツ』も似た境遇です。続編を前提とした引きを持ちながら、2020年の公開時点でシリーズは終わっており、続きが作られる見込みはありません。
MCU本流にも、止まった糸がある
企画が消えたわけではないものの、予告されたまま動いていないケースもあります。
- モルドのヴィラン化 — 『ドクター・ストレンジ』(2016)のクレジットで「魔術師が多すぎる」と宣言してから10年。『マルチバース・オブ・マッドネス』に登場したのは別世界の彼でした
- MCU版ブレイド — 『エターナルズ』(2021)のクレジットで声だけ登場して以降、企画の難航が繰り返し報じられています
- ヘラクレス — 『ソー:ラブ&サンダー』のクレジットでゼウスに復讐を命じられた彼も、その後の動きがありません
- カーン路線 — 『アントマン&ワスプ:クアントマニア』のクレジットで無数のカーン変異体の評議会が招集されましたが、その後ドゥーム主軸への路線変更が起きました
これらが「消えた」のか「待機中」なのかは、『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』以降を見なければ分かりません。クレジットシーンの未回収についてはこちらの記事でも整理しています。
それでも企画は生き返る
ここまで「消えた話」を並べてきましたが、マーベルの歴史を見ていると、企画は案外しぶといとも思えてきます。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は、企画時点では「誰も知らないキャラの映画」でした。『ブラックパンサー』も長年実現しなかった企画です。そして『ゴーストライダー』は、ソニー版2作の後に権利がマーベルへ戻り、2028年にライアン・ゴズリング主演でMCU版が公開されます。ニコラス・ケイジ版から20年以上を経ての再始動です。
ガンビットがテイタムの姿で帰ってきたように、シニスターがドライバーの姿で現れるように、消えたと思われた企画が別の形で立ち上がることは珍しくありません。
2028年には新生『X-MEN』、『ゴーストライダー』、『ブラックパンサー3』が控えています。今は幻に見える企画のいくつかも、数年後には「あの時の伏線が回収された」と語られているのかもしれません。
本記事は2026年9月時点の公開情報にもとづきます。企画の経緯には諸説あるものもあります。 当サイトはMarvel Entertainment, LLCおよび関連会社とは無関係の非公式ファンサイトです。